日本人に少ないからといって安心できない免疫疾患のセリアック病とは
日本人には、まだ多くの人が認知していない病気で「セリアック病」という疾患があります。
大雑把にいうと「小麦粉や大麦といったものを食べると、ブツブツができたり免疫力が低下する病気」のことです。
一般的には、小麦粉や大麦などに含まれているグルテンが原因で発症するようです。
グルテンフリーの食品が多くなっているのもこのセリアック病が原因だといわれています。
しかし、日増しにこのセリアック病が日本でも増加しているようです。
セリアック病をググってみると以下のように説明がありました。
MSDマニュアル:セリアック病
セリアック病は、男性と比べて女性が2倍多く発症する
とくにヨーロッパに多いのは、小麦粉を多く食べる食習慣があるからセリアック病が多いのだと思われています。
その割合をみると、、、
- アイルランドとイタリアでは、150人に1人
- アメリカでは、250人に1人
かなりの割合で、セリアック病に罹患するようです。
が、、、
私たちアジア圏やアフリカでは極めて少ないのが特徴で、ヨーロッパ全体では1%の人々がセリアック病を発症しますが、日本では0.05%ととてもすくない。
このセリアック病は、まだハッキリとしたことが判明していません。
遺伝性の病気であるという見方もあり、、、
セリアック病の患者の近親者では、約10%〜20%の割合でセリアック病を発症し、それも男性に比べて女性の発症は2倍も多い
と、いわれています。
セリアック病は、ヨーロッパの風土病ではない事実
セリアック病は、ヨーロッパで多い病気だから、乳ガンなどと同じようにヨーロッパの風土病だと思われがちでした。
しかし、以前このブログで紹介した本には驚くべきとが記されています。
あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた|河出文庫
セリアック病は、たった30年前にはヨーロッパでも珍しい病気だった事実!
「あなたの体は9割が細菌」の156ページには、以下のようにあります。
1994年(平成6年)に刊行された800ページの消化器系疾患の総覧にも載っていなかった。
[あなたの体は9割が細菌]
この事実とセリアック病の関係は、とても興味深いので少し長いですが本の中身を紹介させていただきます。
鉄壁かと思われていた腸壁から、侵入する細菌たち
まずは、コレラ菌の話から、、、
コレラは米のとぎ汁のような白っぽい水状の下痢が大量に出る病気で、1854年にはロンドンのソーホーで大規模な流行を引き起こした。こんにちでも途上国で突発的に流行している。
p152
原因は小腸にコロニーを作るコレラ菌だが、個の細菌は腸内に長くとどまるつもりはない。
(略)
コレラ菌は、到着するなり自身の存在を誇示する。コレラ菌の最初の仕事は腸壁に付着して、できるだけ早く増殖することだ。そして、だらだらと居座らずにさっさと出ていく。爆発的に増えたコレラ菌は水状の下痢とともに宿主の体から排出される。
下痢というのは細菌と免疫系、双方にとって好都合な仕組みだ。細菌は外に出て新しい宿主にとりつくために、免疫系は病原体とその毒素を洗い流すために、下痢を利用する。細胞の層がぎっしり詰まった腸壁はレンガの壁に似ている。
p152
レンガを固定しているのはモルタルだが、細胞と細胞をつなぎ合わせているのは鎖状の蛋白質なので、腸壁はやや柔軟性がある。何かが腸から血液中に移動するためには細胞の中を直接通り抜けるほかなく、そのときあらゆる種類の取り調べを受ける。
だがときおり、細胞間の鎖がゆるむことがあり、血液から腸へ、あるいはその逆方向への物質の移動が可能になる。必要とあれば、この細胞間のすき間をとおって血液から腸へ水分が押し出される。これが下痢だ。病原体を早く追いだしたいときには便利な仕組みだ。
(コレラ菌は)下痢の激流に乗って脱出し、新しい宿主にとりつく。
p153
この戦略の問題点は、脱出船にのりこむタイミングをどうやって「知る」かだ。この解決策は、集団感知(クオラム・センシング)と呼ばれている。
細菌は一個体ずつ微量の化学物質をつねに放出している。コレラ菌の場合は、コレラ自己誘導物質(CAI-1)という物質を出す。細菌の個体数が増えてくると、その集団の周囲のCAI-1濃度が高まる。
そしてある時点で「定員」に達する、つまり設定した最小限の数が集まる。このとき細菌は、いまが脱出の時だと知る。
細菌の集団はこの作業を器用におこなう。
p154
CAI-1と別の自己誘導物質であるAI2の濃度はコレラ菌の遺伝子発現は変える。コレラ菌は一斉に、腸壁にはりつくために使っていた遺伝子のスイッチをオフにする。
そして、腸壁の「水門」を開けさせる物質をつくる遺伝子一式のスイッチをオンにする。こうした遺伝子がつくり出す物質の一つに、ゾットという閉鎖帯毒素がある。
ゾットを発見したのは、ボストンのマサチューセッツ小児総合病院に研究拠点を置くイタリア生まれの科学者で胃腸科医のアレッシオ・ファサーノ(Alessio Fosano)だ。
p154
ゾットは腸の細胞を結合させている鎖をゆるめ、水を腸の側に流す。コレラ菌はその流水に乗って外に出る。
ファサーノにはつぎなる疑問が浮かんだ。ゾットがヒトの鍵穴を開け閉めするコレラ菌の鍵だとすれば、その錠は何をするためのものなのか。
p154
また、その鍵穴に適合するヒトの鍵──コレラ菌により複製された鍵──も存在するのだろうか。
こうしてファサーノは、ゾットと同じ働きをするヒトの蛋白質を発見し、「ゾヌリン」と名付けた。
ゾヌリンは、腸の細胞をお互いに結びつけている鎖に干渉し、腸壁の透過性をコントロールしている。ゾヌリンが多ければ鎖がゆるんで細胞と細胞の間隔が広くなり、そこを大きな分子が通過して血液中に入る。
p154
セリアック病の原因はグルテンとわかっていても不思議な病気
セリアック病は、自己免疫疾患であるということは明らかです。
おまけにその犯人は、グルテンだということも明確なのです。
しかし、、、
免疫細胞に接触するには、犯人のグルテンが腸壁を通過しなければなりません。ですが、グルテンのサイズは腸壁を通過できるほど小さくなく、どうみても大きすぎるのです。
その答えを持っていたのは、、、
腸壁を緩める物質ゾヌリン
セリアック病は、幼児であろうが老人であろうが罹患してしまう疾病です。
そこで、、、
アレッシオ・ファッサーノ医師は、以下のような検査比較をしました。
セリアック病の小児とセリアック病ではない小児の腸組織の検査です。
すると、案の定・・・
セリアック病の小児の腸組織には、ゾヌリンが高濃度で存在していた
のです。
そして、、、
グルテンは、高濃度で存在するゾヌリンが原因でおきた腸壁の隙間から血液中にまんまと侵入できていた
のでした。
『腸壁を緩める物質ゾヌリン』の仕業は、セリアック病だけでなくⅠ型糖尿病患者にも当てはまります。
このような21世紀病は、ゾヌリンとの関わりが深いと思われます。
前回のブログで紹介した世界的な肥満の増加とも関連性があります。
世界的な肥満の増加やがん死亡者の増加、アレルギー、花粉症患者の増加現象は、ヨーロッパの一地域の問題ではなく世界的に起こっている『自己免疫疾患』です。
「丈夫な体でいることやどのような食べ物を摂って元気でいるか」などの基本的なあり方は、その個人個人のシッカリした考え方と行動にゆだねられています。
ですから、、、
食品メーカーやマスコミ情報など、人任せにせず、自分で判断して良いものを摂るようにしましょう。
ではでは。
自然のめぐみ:ベトナムの塩の海水「カンホアの塩」
参考サイト:
MSDマニュアル:セリアック病
メディカルノート:セリアック病の原因や症状とは? 日本で増加傾向にある理由
あいがとや店主。有限会社グランパティオ代表。グラフィックデザイナー。アートディレクターを経て情報誌「パティオ」を発刊し自然災害や公害問題、健康被害などの問題に目覚める。週末は、もっぱらアウトドアにひたすら勤しむ。 |