5,000人に1人程度発症しているミトコンドリア病とは
ミトコンドリア病というのをご存じでしょうか。
エネルギー代謝系(ミトコンドリア呼吸鎖)の先天代謝異常症で、出生5,000人に1人の割合で発症し、どんな臓器・組織、年齢、遺伝形式でも発病します。
そして、、、
幼少時期発症例は症状が多様で重篤致死の症例が多いことが知られています。
ミトコンドリアは、私たちの体にある細胞に存在しており、ひとつの細胞の中に数百個存在している
といわれています。
そして、、、
食べて摂取したものが、細胞が利用できる「APT」という形でエネルギーを取り出しています。
ミトコンドリアは、よく以下のイラストのような形で表現されますが、、、
この図は、ミトコンドリアの切断図であり、本来は以下のような形をしていると思われます。
ミトコンドリアに関しては、シリーズで紹介していますので過去の記事をご覧ください。
今回は、ミトコンドリアの異常による『ミトコンドリア病』についての記事です。
ミトコンドリア病とはどんな病気か?
厚生労働省は、どのような疾病だと説明しているでしょうか。
ミトコンドリアはエネルギー産生に加えて、活性酸素産生、アポトーシス、カルシウムイオンの貯蔵、感染防御などにも関わっているため、ミトコンドリア病ではこれらの生物学的機能が変化している可能性がある。
しかし、現在のところミトコンドリア病における機能異常の主体はエネルギー産生低下と考えられており、そのエネルギー代謝障害による病態が基本である。
という説明があります。
厚生労働省:ミトコンドリア病
このミトコンドリア病は、、、
また、、、
『ミトコンドリア病』は、2つの系統があります。
- 1つ目は、遺伝子の異変によって異変によって呼吸鎖複合体ではたらく酵素が異常になり、必要なエネルギーを取り出したりため込んだりできなくなるケース。
- 2つ目は、薬の副作用などで二次的にミトコンドリアのはたらきが低下して発症するケース。
さらに、、、
ミトコンドリアは、体内の何処にでも存在しているので、発症する箇所は内臓器官だったり筋肉だったりと全身で発症します。
ミトコンドリア病の症状とは
ミトコンドリア病の大きな点は、、、
ミトコンドリアの働きが低下することで、細胞の活動が低下したり、細胞が消滅したりすること。
ミトコンドリア病は、どんな細胞にも起こり得ます。
たとえば、、、
- [脳]の神経細胞の働きが低下すると、見たり、聞いたり、考えたりする力が低下します。
- [心臓]の細胞の働きが低下すると、血液を全身に送る働きが低下します。
- [筋肉]の細胞の働きが低下すると、運動能力が落ちたり、疲れやすくなります。
中枢神経 | けいれん、ミオクローヌス、失調、脳卒中様症状、知能低下、偏頭痛、精神症状、ジストニア、ミエロパチー |
脳 | けいれん、知能低下、脳卒中、神経症など |
腎臓 | ファンコニー症候群、尿管機能障害 |
肝臓 | 肝機能障害 |
膵臓 | 糖尿病など |
心臓 | 心筋症、伝道障害など |
目 | 視神経萎縮や網膜色素変性など |
耳 | 感音性難聴 |
筋肉 | 筋力低下、駅疲労性など |
腸 | 下痢、便秘など |
血液 | 貧血など |
骨格筋 | 筋力低下、易疲労性、高CK血症、ミオパチー |
ミトコンドリア病の特徴としては、、、
- 臓器や組織、年齢を問わず、発症の可能性があること。
- エネルギーをたくさん必要とする「神経」や「筋肉」に症状が現れる頻度が多い
さらに、、、
ミトコンドリア病の発症は、急に現れたり、ゆっくりと現れたりと変則的。
また、、、
ミトコンドリア病の改善もゆっくりだったり、ほとんど変化しなかったり、徐々に悪化するなどさまざまな可能性があります。
ミトコンドリア病の診断方法とは
ミトコンドリア病の診断は複数の検査が必要です。
たとえば、、、
有名なバイオマーカーとしては、乳酸・ピルビン酸があります。
ミトコンドリア機能の異常により、血液や髄液(脳の周りを満たしている体液)の中の乳酸やその前駆体であるピルビン酸の値が増加することがあります。
これは採血や髄液検査で検査可能です。しかし、乳酸・ピルビン酸値が上がらないミトコンドリア病の患者さんも存在します。
東京都立神経病院:ミトコンドリア病より
ミトコンドリア病の治療法は?
ミトコンドリア病は、様々な期間や場所で発症するために治療法として2つの方向性があります。
- 1つ目は、現在の症状を把握して、その症状に対する治療法
- 2つ目は、ミトコンドリアの働き自体を回復させる原因療法
【現在の症状を把握して、その症状に対する治療法】 |
今現在現れている症状に積極的に行います。 たとえば、、、 インスリン分泌が低下して糖尿病になっている場合にはインスリンを使用する。 けいれんがあるときは、抗けいれん剤を使用する。 各臓器の症状があるときは、専門医に診療してもらい適宜に対症療法を行う。 |
【ミトコンドリアの働き自体を回復させる原因療法】 |
ミトコンドリアに必要な栄養素やビタミンを補充する。 これは、、、 ミトコンドリア内の代謝系は複雑で、ある栄養素やビタミンを大量に補充しも簡単に代謝のはたらきが上昇することは難しいと考えられています。 ですから、食事から摂る栄養素をバランス良いものにすることが治療の基本です。 |
ミトコンドリア病の行政的なサポートは?
ミトコンドリア病は公費対象となっています。
成人の場合は厚生労働省の特定疾患(指定難病21)に指定されています。
また、、、
18歳未満の場合は小児慢性特定疾病の対象です。
対象年齢:18歳未満の児童であること(ただし、18歳到達時点において本制度の対象となっており、かつ、18歳到達後も引き続き治療が必要であると認められる場合には、20歳未満の者を含む。)
厚生労働省:小児慢性特定疾病対策の概要
ミトコンドリア病の診療を行っている主な施設
- NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
- 東京大学医学部附属病院脳神経内科
- 帝京大学医学部小児科神経班
- 埼玉医科大学病院小児科
- 千葉県こども病院代謝科
- 福井大学医学部附属病院脳神経内科
- 大阪大学医学部附属病院神経内科・脳卒中科
ではでは。
参考にしたサイト
順天堂大学:ミトコンドリア病の新たな原因遺伝子を発見
難病情報センター:ミトコンドリア病(指定難病21)
東京都立神経病院:ミトコンドリア病
遺伝子疾患プラス:ミトコンドリア病
バイオPQQ:ミトコンドリアとは何か
あいがとや店主。有限会社グランパティオ代表。グラフィックデザイナー。アートディレクターを経て情報誌「パティオ」を発刊し自然災害や公害問題、健康被害などの問題に目覚める。週末は、もっぱらアウトドアにひたすら勤しむ。 |