人間の細胞より遙かに多い常在菌が働いて人は生きています。
ヒトマイクロバイオームという言葉をご存じでしょうか。ヒトの体に住んでいる細菌叢や微生物叢のことをいいます。私たちの身体は、私たち自身の細胞に加えてそれを遙かに上回る細菌叢によってできています。いわゆる常在菌というヤツです。種類は、数千種から数万種ともいわれおり、重さも数キログラムもあって、その数は100兆とも1000兆ともいわれています。この総称をマイクロバイオータといい、人の身体に作用する総称をマイクロバイオームというようです。
私たちは、膨大な常在菌によって活かされているといっても過言ではありません。例えば食べた物を私たち自身ですべて消化しているわけではなく、腸内に常在している細菌に委託することによって消化しているケースが多いのです。お肌に害を及ぼす悪い細菌がやってきてもそれを防ぐブドウ球菌が潤いによって防いだりしています。というように、星の数ほどの微生物によって、消化を手伝ってもらったり免疫力のバランスを保ったりしています。
免疫力など影で人を守ってきた微生物叢
このマイクロバイオームは、住む国々でも少しずつ違いが出ます。有名な話だと、日本人には乳製品を消化する酵素がなくお腹を下してしまいますが、長い歴史の中で育んできた国の人々は、腸内の常在菌の働きによって上手に消化しています。と、同時に日本人もお味噌やお醤油、納豆といった発酵食品を消化する常在菌をもち合わせています。世界に住む国々や地域によって細菌叢や微生物叢の働きが微妙に変化があるようです。
さて、このように悠久の歴史の中で私たち人類は、様々な常在菌によって守られて生き延びてきたのですが、ここ近代から現代にかけて豊かなシステムが崩壊しています。ほんの100年前にはなかった成人病やアレルギー疾患といったものが席巻しています。また、F1種野菜、化学肥料、農薬などの登場で、食生活はもちろん、それを育み成長させる土壌も著しく損なわれています。また、化学薬品や添加物などでてきて安易で合理的な生活習慣になりました。人類は、あまりにも簡単で便利な方法を選択し過ぎてガンなどの発生を許してしまったようです。
1つの例でいうと、細菌を嫌う洗脳によって帰宅した子供が化学薬品の石けんで手を洗います。お肌を守っていた常在菌は、この石けんで流し落とされてしまいます。元の健康的なお肌になるには3日もかかるといわれています。過度な化学への依存がもたらした例といえます。この話題は、多岐にわたりますので次号へと続きます。