経口補水液は、こんな時に飲む
一九七一年の東パキスタンでの内戦の時に、隣国のインドでは難民に溢れかえっていました。そしてこの難民キャンプの難民を襲ったのがコレラだったのです。そのコレラの猛威は凄まじく、3人に1人は、死んでいくという悲惨な状況でした。
この時に、カルカッタにあるジョンズホプキンズ大学研究所から粉末の経口補水液(ORS)を持った医療班が、三七〇〇人の患者に経口補水療法(ORT)を施しました。
するとコレラによる死亡率は、三〇パーセントから三、六パーセントまでに改善したのです。
この結果をみて、医学雑誌『ランセット』(一九七八年)では、経口補水療法(ORT)を『二〇世紀最大の医学上の進歩』と賞賛しました。
経口補水液の成分は、点滴に近い
コレラは、極端な脱水症を引き起こします。
先進国ならば、点滴をすることで脱水症を防ぐこともできたかもしれませんが、開発途上国であった当時のインドでは、それもままならなかったのです。
そこで、点滴に近い成分の経口補水液(ORS)が使用され、身体から失われた水分や電解質を口から補給してあげることで、大きな成果を出したのでした。
現在では、この経口補水療法(ORT)は、開発途上国のみでなく先進諸国でも使われるようになっています。
これは、経口補水液(Oral Rehydration Solution; ORS)は、脱水症を起こして不足している水と電解質を含んでおり、それらの吸収速度を高めるために、糖質(ブドウ糖)が配合された飲料になっています。
経口補水液は、どんな時に飲んだら良いか
胃腸炎や風邪を引いたりすると、下痢・嘔吐・発熱によってたくさんの汗をかきます。汗をかきすぎると、身体から水分と電解質(塩分)がどんどん失われていきます。
ですから、脱水症に陥った場合は、速やかに身体から失われた水分と電解質(塩分)を補う必要があります。この状態の時には、経口補水液(ORS)は、水分と電解質(塩分)の吸収率が高くなるように調整されているので素早く効きます。
高齢者は、約五〇パーセントが水分ですが、脱水を起こしても脱水であることが加齢によって感じにくくなっています。
また、赤ちゃんや幼児の場合、脱水症を起こしていてもそれを表現する手段を知りません。ですから、まわりにいる大人たちが気づいてあげる必要があります。